品質にも、機能にも、デザインにもこだわっている。ところが、お客さまから返ってくるのは「他と何が違うんですか」「もう少し安ければ」という言葉。広告や商品ページの説明を増やしても、選んでもらう理由が伝わらない。
こうしたときに見直したいのは、商品の特徴と、お客さまが購入を決める理由とのつながりです。商品の強みを伝えるには、「誰が、どんな場面で、何と比べて選ぶのか」を確かめ、その人にとっての価値と、信じてよい根拠をセットで示します。
訴求とは、購入を検討する人に、商品のどの価値を伝えるかを決め、言葉や写真、説明、体験として届けることです。この記事では、商品・ブランドの価値設計に関するutsuwaの視点から、強みの整理を実際の見せ方までつなぐ方法を解説します。新商品の発売準備にも、既存商品の売り方の見直しにも使える考え方です。
目次
「高品質です」の先に、買う理由はあるか
作り手にとって重要な特徴が、そのまま購入の決め手になるとは限りません。「独自の技術」「厳選した素材」「長年の実績」と書かれていても、購入する人には、自分の暮らしや仕事にどんな違いがあるのか分からないことがあります。
たとえば、毎日持ち歩くものなら、軽さの数値に加えて、どのバッグに入るか、片手で扱えるか、帰宅後に洗いやすいかも判断材料になります。同じ商品でも、誰が、いつ使うかによって、気になる点の順番は変わります。
ここで整理したいのは、次の3つです。
| 整理すること | 確かめる問い |
|---|---|
| 商品の特徴 | 仕様・設計・提供内容として、何が備わっているか |
| 顧客にとっての価値 | その特徴によって、使う人の何が楽になり、何が満たされるか |
| 裏付け | 仕様、実演、比較、利用者の声などで、どこまで確かめられるか |
見た目への愛着や、使うたびに気分が上がることも価値です。便利さだけに言い換える必要はありません。ただし、「上質」「自分らしい」といった言葉だけでは判断しにくいため、質感が分かる写真、使う場面、選べる仕様など、具体的に感じ取れる材料と組み合わせます。
utsuwaでは、特徴を列挙した段階で訴求が決まったとは考えません。買い手が求めていることと、商品が実際に提供できることが重なる部分を、何で伝えるかまで決めます。
顧客が何と比べ、どこで迷ったかを聞く
社内で「一番の強み」を投票する前に、実際の選ばれ方を確認します。購入者の声だけでなく、検討したものの購入を見送った人や、販売・営業の担当者が聞いている迷いも材料になります。
聞きたいのは、商品の感想より、購入に至るまでの具体的な場面です。
- 探し始める前に、何に困っていましたか。
- 他の商品、今使っているもの、買わずに済ませる方法と比べましたか。
- 最後まで迷ったことと、決め手になったことは何ですか。
- 価格を見たとき、どの情報が足りませんでしたか。
- 購入後、期待どおりだったこと、違っていたことは何ですか。
競合は同じカテゴリーの商品だけとは限りません。買い替えを延ばす、手持ちのもので代用する、別の方法で困りごとを解決する、といった選択もあります。そのため、他社より優れた機能を伝えても、「今のままで困っていない」という迷いには答えられない場合があります。
「高い」と言われたときも、違いが分からないのか、価値は分かるが予算を超えるのかを分けて聞きます。予算や購入条件が合わない相手には、説明の改善だけで対応できるとは限りません。
まず一つの商品と、具体的な利用場面を選び、購入者と見送り者の言葉を並べます。少人数の声は仮説を見つける材料として扱い、全顧客の傾向とは決めつけず、その後の反応で確かめます。
特徴を「自分が選ぶ理由」に変える
ここからは、携帯用ボトルを使った説明用の例です。実際の支援案件や販売成果を示すものではありません。各特徴が仕様として確認できている商品を想定します。
まず、優先する利用場面を決める
「誰でも使えるボトル」では、伝えたい情報が広がります。そこで、今回は「通勤先で使い、帰宅後に毎日洗う人」を対象に考えます。
この人が購入を見送る理由が「洗うのが面倒で、結局使わなくなりそう」なら、保温性能だけを大きく見せても、その迷いが残ります。分解して洗える構造や、実際に手入れする様子が、選ぶための材料になります。
| 確認できている特徴 | その場面で伝える価値 | 一緒に示す材料 |
|---|---|---|
| ふたを分解して洗える | 毎日使うものを、手入れしながら使い続けられる | 外す部品と洗い方が分かる写真・実演 |
| 本体の直径と高さが分かる | 手持ちのバッグに入るか判断できる | 寸法、バッグに入れた写真、注意点 |
| 保温性能を試験している | 使う時間帯の飲み物の温かさを検討できる | 試験条件と結果、使用条件による違い |
ここでは「高機能なボトル」という説明から、「毎日使うときの、どの迷いに答えるか」へ具体化しています。寸法や性能を曖昧にして印象だけを良くするのではなく、判断に必要な情報を選びます。
主役にする価値と、補足する価値を分ける
手入れのしやすさが重要だと分かったら、商品ページの冒頭では使う場面と手入れの様子を見せ、保温性能、容量、色などを続けて説明する案が考えられます。
もちろん、容量が最優先の人には別の順番が適しています。一つの訴求ですべての人を説得しようとせず、今回の広告や売り場で、誰のどの迷いに答えるのかを揃えます。
強みが多いときの課題は、削ることだけではありません。購入の決め手になる情報から、理解しやすい順番で見せることです。
実務例:商品価値を、制作の判断基準まで整理する
utsuwa代表者が担当した消費財ブランドの仕事では、ブランドの対象顧客、提供価値、商品の役割、コミュニケーション方針を整理し、外部パートナーへの依頼や提案のレビューにつなげました。
その際に扱ったのが、顧客にとっての価値、価値を実現する商品の特徴、その説明を支える根拠を整理することです。技術や品質などの資産を並べるだけでは、広告や商品説明で何を主役にするかが決まりません。どの場面で使ってもらいたいかと合わせて、見せる内容を考える必要がありました。
また、複数の商品がある場合は、それぞれに同じ説明を当てはめず、ブランドの中で担う役割も整理しました。そのうえで、依頼資料や制作物の確認に、対象顧客・提供価値・商品の役割との整合性を持ち込む進め方を取りました。
この経験からutsuwaが重視しているのは、ブランドの定義を、現場で選べる基準にすることです。「この写真で想定する使い方が伝わるか」「この説明が購入時の迷いに答えているか」と判断できる具体さにすると、制作を依頼する側も、つくる側も、検討すべき点が明確になります。
本事例は代表者個人の担当経験に基づく取り組みの紹介です。企業・商品・時期・数値など、案件の特定につながる情報を省いています。売上改善の因果関係を示す事例ではありません。
広告・商品ページ・店頭で、伝える役割を決める
訴求の方向が決まったら、お客さまが接する場所ごとに、何を伝えるかを決めます。広告で興味を持っても、商品ページでその理由を確かめられなければ、迷いは残ります。
たとえば、先ほどのボトルで手入れのしやすさを伝えるなら、次のように役割を分けられます。
| 接点 | この接点で確かめてもらうこと | 表現・情報の例 |
|---|---|---|
| 広告 | 自分の使い方に合いそうか | 毎日使う場面と、分解して手入れする様子 |
| 商品ページ・LP | その良さが本当か、自分の条件に合うか | 洗い方、仕様、注意点、価格、購入条件 |
| 店頭・接客 | 実物で確かめたい迷いが解消するか | 部品の外し方、持った大きさ、使い方の説明 |
同じ価値を伝える場合でも、すべての場所に同じ文言を載せるだけでは不十分です。短時間で興味を持ってもらう場所と、比較して確かめる場所では、必要な情報量が違います。
デザインも、この目的に合わせて考えます。使う場面が重要なら、その場面を想像できる写真。構造が判断材料になるなら、見えない部分が分かる図や実演。質感が決め手なら、素材や仕上げが伝わる撮影を選びます。世界観を整えることと、購入判断に必要な情報を見せることを両立させます。
社内の好みで決めず、理解と購入の反応を確かめる
訴求案ができたら、想定する顧客に見てもらい、「何が良さだと思ったか」「どんな人が使う商品だと思ったか」「この価格なら、何が分かると判断できるか」を聞きます。
「分かりやすいですか」と尋ねるだけでは、こちらの意図が伝わったかを確かめにくくなります。相手の言葉で説明してもらうと、意図した価値と、実際に受け取られた価値のずれが見えます。
公開後は、広告のクリック率だけでなく、商品ページでの行動、購入、問い合わせの内容まで確認します。広告が目立つようになってクリックが増えても、購入時の迷いが解消したとは限らないためです。
変更するときは、何を確かめるために、どの説明や写真を変えたかを記録します。前後の数字を見る際は、流入元、価格、在庫、時期などの条件も確認し、変化をすべて訴求の効果とは扱わないようにします。
最初に社内や制作パートナーで揃えたいのは、次の一枚です。
- 対象と場面: 誰が、いつ、何のために使う商品か。
- 比較と迷い: 何と比べ、どこで購入をためらっているか。
- 主役の価値: 今回、最も伝えたい選ぶ理由は何か。
- 裏付けと表現: 何が確認できていて、どの写真・説明・体験で示すか。
- 確かめる反応: 誰のどの反応を見て、次の修正を決めるか。
これが揃えば、「もっと良く見せたい」という依頼から、具体的な制作と改善の議論へ進めます。
商品の訴求を考えるときによくある質問
競合と機能が似ていても、選ばれる理由はつくれますか?
機能以外にも、特定の使い方への適合、デザイン、手入れ、購入後のサポートなどが判断材料になります。実際の顧客が重視し、自社が提供できる部分を確かめます。顧客にとって意味のある違いが見つからなければ、商品の内容や提供方法を改善する検討も必要です。
値下げより、伝え方の改善を優先すべきですか?
違いや価値が伝わらずに比較されているなら、伝え方を見直す余地があります。ただし、予算、商品内容、送料や購入条件が障害なら、その問題も扱います。まず原因を分けたい場合は、いい商品なのに売れない原因と改善の優先順位をご覧ください。
キャッチコピーやLPの制作を依頼する前に、何を用意すればよいですか?
商品の仕様、購入者や見送り者の声、比較される商品・方法、現在の広告や商品ページを揃えます。訴求を先に完成させる必要はありません。分かっている事実と、まだ確かめられていない仮説を分けて相談すると、調査と制作の進め方を決めやすくなります。発売全体の設計には、新商品の売り方とプロモーション戦略も参考になります。
商品の強みと伝え方を、実際の施策まで整理する
「商品には自信があるのに違いが伝わらない」「価格の話ばかりになる」「社内で打ち出し方が決まらない」。こうした状況からご相談いただけます。
utsuwaは、商品・ブランドの課題整理と戦略設計から、広告・Web・店頭のクリエイティブ開発、施策の実行・改善まで支援しています。何を選ぶ理由として伝え、どの接点を見直すかを整理し、制作や運用の依頼に使える形まで具体化します。
企画・編集:株式会社utsuwa
本記事は、商品・ブランドの価値設計とコミュニケーションに関するutsuwaの考え方を整理したものです。説明用の例と、代表者個人の担当経験に基づく実務例を区別して記載しています。